第10章 知らない女の子と五条くん
硝子はまたも強引にオーダーを通す。
「硝子、俺と寧々がお揃いになるのが嫌なわけ?」
「嫌っていうか…五条には取られたくなかったんだよね」
店員さんがオーダーを持ち帰ったのを見送って、硝子は深くため息を吐いた。
「自分でもわかんないけど、少ない人数の中で寧々の1番は私だと思ってたんだろうね。同性なのもあって」
硝子は砂糖の入っていない苦いコーヒーを啜った。
「私の知らないところで、寧々が何をしようが寧々の勝手だけどさ。話してほしいよね、本音は」
苦虫を噛み潰したような顔をした硝子…、そんなにコーヒーが苦かったのかしら?
「硝子、それって…」
ふと…さっきの「五条のこと好きなの?」という発言が頭を過ぎった。
「寧々、このコーヒー美味しいからきっとカフェラテも美味しいよ。早く飲みなよ」
硝子は言いかけた私の言葉を遮るようにカフェラテのカップを指差す。
「そうね、いただきます」
苦いコーヒーがミルクの甘味で中和されて飲みやすい味。
「うん、美味しいわ」
ほろ苦い味が心地よくて、口の中がとても幸せね。