第10章 知らない女の子と五条くん
「寧々の下着を返せ泥棒ーーっっ!」
瞬間的に走り出した五条くんには、私の声は届かなかったらしい。
「俺以外が見るんじゃねぇーーー!!!」
何か大きな勘違いをした五条くんは、裏道に入り込もうとした泥棒をあっという間にとっ捕まえた。
紙袋に入っているのは下着ではなく靴下で、絶対に取り返したかったのは後から足した呪物なんだけど…。
首根っこを掴んで、体をズルズルと引き摺る様は…どっちが悪い人か分かったもんじゃない。
泥棒から取り返してくれた紙袋を持った五条くんは、それを私にグッと突き出した。
「他の男になんか渡さない。寧々、怪我はないか?」
「え、えぇ…怪我はしていないけど…」
手が触れることもなかったし、拒絶をするよりも早く持ち去られてしまったから。
後ろからの急襲では視界に収まらなくて、術式すら発動できなかった。
「やっぱ五条が捕まえるよね。通報しといたよ」
五条くんが走り出したのを見た硝子はすぐに悟り、携帯から警察に通報したのだと言った。