第10章 知らない女の子と五条くん
一足先にカフェに着いた五条くんは、ファンシーなお店の外観をまじまじと眺めている。
いくら五条くんの容姿が整っていようと、男性というだけで浮いてしまいそうな可愛らしいカフェ。
空をイメージしたレイアウトは水色を中心に、雲のような白がほわほわと漂っている。
呆然と店前に立ち尽くす五条くんを避けるように通行人がすれ違う。
「ランチタイムまだ間に合いそうだね。寧々は何食べる?」
「私はデザートも食べたいから軽めにしようかし…っ!?」
誰とも繋いでいない、紙袋を持った手を後ろから引っ張られる。
「ーっ!」
正確には私の手ではなく、持っていた紙袋を見知らぬ男にひったくられた。
「返して!」
くるっとUターンをして全速力で駆け抜けていく男が、先程向かい側からすれ違った人だと気付いたのはずっと後のこと。
そして紙袋をひったくった男は、ずっとずっと先まで走って逃げ去っていく。
「待ちなさい!」
そう言って走り出した私の横を抜き去り、風をビュンビュンと切って男を追いかけて行ったのは…
「五条くんっ!呪物が入ってるの!」
あろうことか、男が奪い去った紙袋には回収した呪物が入っている。