第3章 任務と楽しい思い出
「術式を開示するほどの敵でもない。このくらいどうってことないわ」
呪力を込めた右手の拳を敵の前に突き出す。
呪霊はその手に狙いを変えて攻撃を集中させる。
よっぽど腕に自信があるのか、無数の腕以外は動かさず棒立ち…本当に1級に相当するの?
「触れさせないと言ったはずよ。最も私もあなたに触りたくなんかないけど」
体を使った物理攻撃を叩き込むには、嫌でも呪霊に接触する必要がある。
でも私は自分から触れるのだって嫌。
開示しなくても分かるでしょうけど、私の術式は触れることなく相手を倒す。
「消えて」
握った拳をパッと開くと
濁った白い光が呪霊に向かって解き放たれる。
跡形もなく消え去る呪霊、さっきまでそこに存在していたかも怪しいほどに。
全部、全部、消えてしまえ。
私の汚物に塗れた過去の代わりに。
この手でいくら呪霊を祓っても払いきれない過去とわだかまり。
いつまでも精算することのできない感情。
「帰るわよ、五条くん」
「結構なお手前だな。1級1匹くらい余裕って顔も可愛い…ククッ、だけど寧々、この任務…俺がついてきて良かったなぁ?」