第10章 知らない女の子と五条くん
「絶対に嫌。俺、今から好きな子とメシ行くの。邪魔しないでくれる?」
「「「えっ…」」」
「えっ…な、なんでこっち見るのよ…」
五条くんが視線を向けた先には私しかいない。
目線をチラリと横にずらすと、隣にいた硝子はいつのまにか他人ほどの距離を取っていた。
煌びやかなお姉さん達の「え、この子?」という含みのある視線が突き刺さる。
「世界で一番可愛い俺の好きな子。だから他当たってよ」
五条くんは高らかに宣言して、私の元へとつかつかと歩み寄った。
お姉さん達もたじろぎながらではあれど、自然と道を開けた。
その場にいただけの通行人ですら、五条くんと私を交互に見比べている。
は、恥ずかしい…!
「行こう寧々」
五条くんは私の手を取り歩き出す。
後ろではお姉さん達が言葉を失っている。
「触らないで」の術式はなぜか発動しなくて、手は繋いだまま。
ずんずんと駅ビル内を突き進んで、一連のやり取りを見ていない人波に合流する。
「寧々、五条」
私達の少し後ろを離れて着いてきた硝子が声を掛けた。