第10章 知らない女の子と五条くん
「えっ…」「げぇ…」
近づいてくる私達に気づいた五条くんは、身動きが取れない状態だった。
「寧々!硝子!」
頭一つ抜けている分、困惑している五条くんの顔は見える。
だけど…
「あの子達何なんですか!?彼女ですか!?」
「お兄さーん!私達とご飯行きましょうよー!」
キャピキャピという言葉がお似合いの、派手な格好の知らない女性複数人に取り囲まれている。
10代後半から20歳くらいに見える年上のお姉さんの集団だ。
「待たせちゃってるから、そろそろ退いてくれる?」
「えー!何でですかー?ウチらが奢るんでいいでしょー?」
「…あのさぁ」
キャーキャーと騒ぐ女性達と違って、五条くんは冷静でどこか呆れた顔をしていた。
「邪魔なんだけど」
低くて愛想のない冷たい声。
五条くんの突き放すような言葉と声色を聞くのは初めてだ。
人柄を知っている私ですら、背筋がゾクっとなるような声音。
チラリと隣の硝子を見ると「おー怖い怖い」と両手を広げていた。
「せめて連絡先だけでもっ」
五条くんの右脇にいた女性が随分と押しの強い人だったようで、周りが一蹴され明らかに引っ込んだにも関わらず
彼女だけはしつこく絡み続けていた。