第8章 違う人と任務
「足元はよく見ておくんだよ。あの時みたいに転んでも助けてあげられないかもしれない」
「その節はお世話になったと思うわ。それでも任務の最中になんて転ばないわ」
強がったわけではない。
本当に足元をすくわれそうなほどの闇を、得体の知れない闇を慎重に進んだ。
常に気を張って周囲を警戒しつつ、同時に索敵もこなしていく。
それでも…まるで呪物に足が生えて逃げ去ったように見つからない。
「おっと…行き止まりだ」
ひたすら真っ直ぐに歩いていたせいで、その先の進路を壁に拒まれる。
「1回戻りましょうか。見落としがあるかもしれないわ」
来た道を辿って、最初のエレベーターの乗り口まで戻る。
「おや?」「…変ね」
正確に時間を測ったわけでもないけど、エレベーターに辿り着くまでが妙に早い。
「二手に別れた方が効率は良さそうだけど、悟から寧々ちゃんに怪我をさせるなと言われているからね。護衛させてもらうよ」
右に行って壁を確認して、左に行ってまた戻る。
何度も直線距離を往復してみる。
「ねぇ、夏油くん…これって…」