第8章 違う人と任務
「なんだか気味が悪い…」
暗い視界の中で、どこからか視線を感じるような違和感。
帳の中には私と夏油くんしかいないはずなのに、存在を押し殺すような何かを感じる。
呪物に引き寄せられた呪霊…?
それとも「大鯰の髭」が持つ呪力によるものだとしたら…そう考えると納得がいく。
生き物の念が込められたものなのだから、どこかに目のような役割もあるのだろうか。
「こんなところに本当にあるのかしら?」
「何かの呪力は流れてるから、あるにはあるんだろうね。ただ…流れが一定じゃない。何かに阻害されているようだ」
それが視線かはハッキリしないと付け足した夏油くんは、呪霊を数体解き放って警備を敷く。
「…っ、待って夏油くん、近くなってる」
この広い空間で自分の半径10数メートルを索敵した結果、呪物はあと少しのところにあるようだ。
「寧々ちゃん、どの方向か分かるかい?」
「右斜め前から反応が…っ、おかしい…」
確かに呪物の場所を特定できそうだったのに、消えるように反応が途絶えてしまった。
そして私達は獲物を追いかけるように、誘い込まれるようにどんどん奥へと進んでいく。