第8章 違う人と任務
「わしゃわしゃとかき乱してね。撫で回されたんだ」
「あ…え?」
「まるで大型犬が戯れて飛びついてきたようだったよ」
夏油くんはサラサラの前髪に手櫛を通しながら、困ったように嘆いた。
「その上、傑の髪を撫でても嬉しくもなんともねぇなって言われたんだよ。もう意味が分からなくて…」
五条くんは夏油くんをボコボコにするとの宣言はしていたけど、本当に意味の分からない事をしてる…。
「傑の髪をってことは、寧々ちゃんは悟に頭撫でられてたりする?」
「……!そ、そんなことはっ」
「ふふ、変なことを聞いてしまったね。話題を変えようか」
夏油くんは広げた話を畳んで、今回の任務についての確認をする。
「まず、私達が回収に向かう"大鯰の髭”には、一級相当の呪いが込められていることが分かっている」
回収にあたる呪物「大鯰の髭」は、江戸時代に巨体を誇るナマズが、地震を引き起こしたとする伝説に由来する。
そしてとある神社に伝わる神話には、雷神タケミカヅチと海神フツヌシが、要石を大地に突き刺して暴れる大ナマズを鎮めたとされている。