第2章 馬鹿と告白と初デート
馴染みのない言葉を今実際に体験している。
今日は不思議なことが多い…。
「ん、降りるぞ」
「ま、待って!」
もちろん五条くんは待ってなんかくれない。
2人分のお金を流し込むと、さっさと降りて行ってしまった。
さっきまで乗っていたバスを見送りながら、五条くんは思い切り体を伸ばした。
「ふぅ〜、狭かったぁ〜」
「ごめんなさい、触らないように気を使わせてしまったのね」
「気にすんなよ。寧々との約束だから。俺はちゃんと約束を守る男だぞ…っと!」
ぐいーっと腕を伸ばして、肩をぐるぐると回す。
「…よし、帰るか!」
「うん」
すっかり暗くなった道を人間1人分の距離を開けながら並んで歩く。
「寧々、明日の授業の体術訓練だけど俺達付き合いましたーってことでさ、俺とペア組む?」
「嫌」
「またまた〜恥ずかしがっちゃって〜」
「なんなら、公に宣言するのは止めてほしいんだけど」
五条悟…五条家という後ろ盾は、そう易々と明かしていい手の内じゃない。
兄や両親が知ったらどんな手段に出るかも分からない。
その時のことも考えて対策を練るまでは、切り札を取っておかなくては。
ここ一番で使った方が、兄達の目論見を打ち砕けるかもしれない。
それから…好きでもない人と公衆の面前で恋人ごっこなんてごめんよ。
「寧々は止めてほしいことが色々あるね。でも全部受け入れるよ、だって寧々が好きだから」