第2章 馬鹿と告白と初デート
人が隙間に割って入ることのできない距離で。
それでも私には服の裾ひとつ触れない。
体格の大きい五条くんだけど、ぎゅっと体を小さくして膝に手を付いて縮こまっていた。
「……バカ。」
「聞こえたぞ、寧々」
ぼそっと呟いた言葉は聞こえる距離。
他の乗客の話し声やバスの揺れる音にはかき消されなかった。
「五条くんが先に降りないと、私が出られないじゃない」
横並びの2人掛け席は、先に座った私はどう足掻いても先に降りることはできない。
「お金は私が払いたいから、後で一回退いてくれる?」
「今寝たフリしてっから無理」
目を開けたまま寝言を言ってのける五条くんを間近に感じながら、バスは元来た道を戻っていく。
「なぁ、」
寝たフリをしていたらしい人が、降車寸前で話しかけてきた。
「また今度来た時にはお土産買おうな、お揃いの」
「水族館の話?」
「んー?次は動物園も行きたいって?しょうがないなー俺が連れてってやるよ」
勝手に約束を増やされて、勝手にデートの予定が決まっていく。
……そっか、デート、なのか。