第7章 夏休みといえば
「俺が選んだ浴衣を着こなす寧々とか…最高だろ…っ」
「ああ、やっぱり五条くんチョイスなのね。用意してくれたのは有難いけど」
「俺色に染まった寧々…2回戦行くか、これ…?」
五条くんはぶつぶつと独り言を言って、一向に動こうとしない。
木偶の坊みたいに直立したまま、脳内で妄想を繰り広げているよう。
「ねぇ、五条くん。早く行きましょ」
「お、おう…!」
堪らず自分から催促の声を掛けた。
「何でも買ってくれるのよね?私、食べたいものがいっぱいあるの」
屋台の食べ物も…もちろん楽しみではあるけど。
私の目的はそれだけじゃないの。
「楽しい思い出」を早く作りたいの。
今こうして五条くんと一緒にいるだけで、思い出にはなっていく…けど、
「売り切れる前にほら、早く!」
はち切れる前にほら、早く。
いつもとは違う浴衣姿にドキドキしてるのは五条くんだけじゃない。
スラっとした細身の長身に、袖口から覗く筋肉質な腕。
少し開けた胸元とゴツゴツした鎖骨。
キュッとくびれた足首。
足の爪の先までが…綺麗なんだもの。
五条くんの用に視線を逸らそうにも、釘付けになってしまう。
鼓動がドッドッと高鳴って、はち切れてしまいそう。