第7章 夏休みといえば
床に垂れた分も、五条くんが丁寧に拭いてくれた。
「せっかく買ってくれたのに、溢してしまってごめんなさい…」
「んなもん気にすんなよ。それより着替えねぇとシミになるぞ」
「そうね、切りもいいし勉強会はここまでにしましょう。私は着替えるから五条くんは「俺は部屋に戻るよ」
案外、すんなりと帰ってしまうのね。
着替えを見られるわけにもいかないから、引き留めるなんてことはしないけれど。
それでも、もう少し名残惜しそうにしてくれてもいいのよ…?
なーんてね…。
「今日はありがとな、寧々。また来るぜ」
五条くんを見送って、急いで別の服に着替える。
共用の洗濯機に汚してしまった服を突っ込んで、また部屋に戻って、他に飛び散ったところはないか掃除をする。
結果としては、五条くんが全部綺麗に拭いてくれたおかげで何もすることはなかったけど。
無事だった教科書類も全部片付けて、テーブルは真っ新な状態に戻る。
五条くんのことだから、忘れ物をしているんじゃないかっても思ったけれど、そんなことはなく自分のものしか残っていなかった。
「楽しい思い出」ほどあっさり終わってしまうのね。
……どうせなら、水族館に行った時の服に着替え直そうかしら。
「楽しい思い出」を少しでも感じていたいから。
「寧々」