第7章 夏休みといえば
「寧々の為にもなったんなら良かった。教えてくれてありがとな」
「ええ、こちらこそ」
五条くんが問題集と対峙している間に、自分の勉強も進められたから良かった。
テーブルの上に広げていた教科書やノートを、五条くんのものが混ざらないように片付けていく。
そのうち1冊の教科書は、寝る前に暗記をしたいからベッド横のサイドテーブルに置いた。
「あっ…!」
お互いのものがごっちゃにならないようにばかり気を付けていたから。
テーブルに置いていたテキスト類に紛れた缶ジュースに、うっかり肘をぶつけてこぼしてしまった。
予想以上に勉強が捗ったからか、飲むのを忘れていた缶から中身がドバッと溢れた。
幸いにも教科書には溢れず無事だった。
けれどもテーブルから弾き飛んだ缶の中身が私の服に飛び散ってしまった。
「…っ、最悪…っ。せっかく五条くんが買ってくれたのに…」
上下共にジュースでびちゃびちゃに濡れた私。
「寧々、大丈夫かっ!?」
五条くんはポケットティッシュを取り出して、私の服を拭いてくれた。
こんな時ですら、手が直接触れないようにしてくれる。
「私は大丈夫…あ、ティッシュはそこの箱のを使ってくれていいのに」