第7章 夏休みといえば
「寧々、授業中もずっと見てるんだけどよ。そのシャーペン、ちゃんと使ってくれてんだな」
「せっかく買ってもらったから、使わないのも悪いと思って」
そういえば私はシャーペンを、五条くんはボールペンを使ってなんて言ったっけ。
微妙にお揃いじゃないちぐはぐさが、私達の訳ありの恋人っぽくて素敵ね…なんて。
「もちろん俺も持ち歩いてっからよ…ほら!」
五条くんは持参したペンケースからお揃いのボールペンとシャーペンを取り出した。
3匹の小さなイルカがチラリと揺れる。
「私もボールペンはペンケースに入れてはいるわ」
ペンケースの中では4匹目のイルカが小刻みに揺れていた。
「使ってはないけどね」
嘘、本当は書類にサインをする時や任務報告書の作成に使ってる。
インクも減って掠れかけているけど、気付かれることはないでしょ。
「ちょっと寧々の貸して!俺のとどっちがインク減ってるか「あ、ちょっと!」
五条くんは有無を言わさず、私のペンケースからボールペンを抜き取ると、自分のと合わせて両手に持った。
そしてノートの上の余白部分にぐるぐると円を描いた。