第7章 夏休みといえば
ううん、むしろ五条くんの隣にいられるなら……。
「分かったわ、教えてあげる。優しくする気はないけどね」
「本音を言うと、丸写しさせてくれ」
「今すぐ追い返してもいいのよ?」
教えてほしいと請うた人間の言葉とは思えない…けど、それがなんだか五条くんらしくて。
でも丸写しなんかしたら、五条くんの為にならないじゃない。
「いいか、寧々?俺は完全に丸写しではなく、ところどころ間違えることで、俺が解いたという真実味を持たせてだな」
「口じゃなくて手を動かして」
ローテーブルに向かい合って、五条くんのまっさらなプリントに目を向ける。
「選択式だからって適当に選ばないの。なんでそうなったのか数式書ける?」
「俺は直感を大事にしたい男なんだよ」
「数学に直感は要らない。公式を大事にして」
五条くんは最初こそ、へらへらとお喋りばかりしていたけど、問題を解き進めるに連れて課題に集中していった。
「寧々、ここはさっきの公式か?」
「そう、応用問題だから難しいけど…「こうか!」