第6章 クッキーとゼリー
「そんなことで変わらないでしょ…ぅ」
誰かに食べさせてもらうことで味が変化するなんてこと……。
「寧々みたいに甘くなったって言ってんだよ。次は寧々が食べる番な」
「んむっ!?」
五条くんは私が持っていたスプーンをひょいっと抜き取ると、ゼリーを掬って否応なしに私に食べさせた。
拒否をする暇もなく口の中へ届けられたゼリーは、おかしいくらいに甘かった。
物足りないと思ったのはどこ吹く風。
甘さが口の中から広がり出し、全体に染み渡る。
甘くて、甘くて、甘いのに、もう一口、またもう一口と食べたくなる。
本当に同じものなのかと疑うくらい、白桃の甘さが際立った美味しいゼリーだった。
「…!美味しい…さっきと違って甘さを感じるわ…」
「なんでだと思う?寧々」
「……さぁ?馬鹿だから分からないわね」
「ククッ、強がんなよ。いつまでも可愛いけどな」
お互いが口をつけた1つのスプーンと、1つのゼリー。
もっと食べたいのに、食べるものは1つしかない。