第6章 クッキーとゼリー
「ちょっと…!」
「んー…味が薄いな。全っ然甘くねぇ」
やっぱりそういうものなのね、と納得しかけたのに
「寧々、次は寧々が俺に食べさせて」
「えっ」
そういう「次」もある…のね…?
「寧々が今持ってる方のスプーンでな」
「えっっ」
私の右手にあるスプーンは、私が口をつけたもので、それを自ら五条くんの口に運ぶなんてことは…!
「あ、足さえ動けば…っ」
上半身はぎこちなくとも動かせるのに、ベッドの中に伸ばした足は一向に力が入らない。
逃げも隠れも出来ない私は、ニコニコと…とてつもなくニコニコと笑う五条くんと向かい合うしかない。
顔を逸らしたところで、五条くんが一歩も譲る気がないのは変わらない。
「寧々、あーん」
五条くんは口をあんぐりと開けて、早く早くと指で指し示す。
「せ、せめてスプーンは自分のを使ったらどう?」
「やなこった」
そう言って五条くんは、自分の手にあったスプーンをゴミ箱に向かって投げた。
投げられたスプーンは、背面にあるゴミ箱に狙ったかのように収まる。