第6章 クッキーとゼリー
時刻は深夜3時。
朝になるまではもう少しだった。
「今更帰らねーよ。ゼリーだって食べかけなんだからよ」
「そのゼリーは持ち帰っていいから」
「んじゃ、有り難く…」
五条くんは持ち帰るでもなく、その場にドスンと腰を下ろすと、食べかけのゼリーを勢いよく食べ切った。
……例のスプーンで。
「寧々にはこっちの白桃ゼリーをやろう。ほら、食べろ」
「あ、ありがとう」
ご丁寧に新品のスプーンと一緒に渡してくれる。
きっとお互い食べ終わったら帰るのよね…?
「……あんまり、甘くないわね」
どうしてかしらね、ミカンと白桃なら当然、桃の方が甘いはずなのに。
どこか物足りない味気のないゼリー。
美味しいのだけど、あっさりとしていて寂しい味がする。
「美味しくねぇの?俺にも一口くれよ」
「ええ、どうぞ。新品のスプーンでね」
五条くんは私の忠告を聞き流して、みかんゼリーを食べたスプーンでそのまま掬った。