第6章 クッキーとゼリー
「どっちも欲しいんだろ?」
私が否定するよりも先に、みかんゼリーを一口頬張ると
「口移しされたかったんだな」
とんでもない勘違いをかまして、私に迫った。
「き、気持ち悪い…!」
勘違いとは言ったけれど、この顔は間違いなく確信犯でしょう!?
「ん」
私の体が思うように動かないせいで、人間0.1人分の距離もない。
どんなに顔を背けても、五条くんがその気になってしまえば…唇は最も簡単にくっ付く…けど!
「そ、そういうのは…まっ、まだする気はないから!」
「まだ?」
「えっ…わ、私…何を…」
五条くんはごくんと飲み込むと、満面の笑みで…いえ、したり顔でそれはそれは嬉しそうに
「まだ、な。言ったな?寧々」
自分の発言の愚かさに気づくのはすぐだった。
「なっ…!なっ…!」
熟れたみかんのように顔が染まっていく。
気恥ずかしい気持ちでいっぱいなのに、逃げ出すことは出来なかった。
逃げることしか出来ないのに、それすら出来なかった。
「五条くんなんて大嫌いよ!か、帰って…!!」