第6章 クッキーとゼリー
「はっ?えっ?」
五条くんは私の使ったスプーンでゼリーを掬い、なんてことないように自分の口へ運んだ。
「ん、甘いな。甘ったるい」
「ちょ、ちょっと!?」
びっくりしているのは私だけで、五条くんは至極同然のように飲み込んだ。
「私の「寧々、あーんしろ」
「た、食べるわけないでしょ…っ」
流れるような動作で2口目を掬うと、私の口元に差し出した。
「五条くんも食べたかったのなら、別のスプーンで…っ」
事実、テーブルの上にはコンビニから貰ってきたであろう、プラスチックのスプーンがもう一つ置いてあった。
だけれど取りに行こうにも、体が未だに言うことを聞かない。
五条くんはそれを良いことに、ベッドから動けない私にスプーンをぐいぐいと寄せた。
「なんだよ寧々、キスされたいのか?」
「そんなわけ…っ」
なんて傲慢で横柄な猫なのでしょう。
「ん、アレか。アレがいいんだな?」
五条くんは私の視線の先にある、未使用のスプーンをチラリと見た。
「みかんゼリーもキスも…」