第6章 クッキーとゼリー
そこまで強引にして「あーん」を成立させたい五条くんと、絶対に自分で食べたい私。
「どっちか選べよ。俺のキスか、みかんゼリーか」
「拒否権はないの?」
「寧々に拒絶されるのは……もう耐えられねぇな」
それまで強気な態度を見せていた五条くんが、しゅんと落ち込んだように見えて。
「寧々は…どっちも嫌なのか…?」
子供のようにしょげた顔をした。
「……み、みかんゼリーで」
蒼い瞳が海面のように、揺蕩うように波打つから。
そんなにうるうるした目を向けられたら、選ばざるを得ないじゃないの。
「俺のキスじゃなくていいのか…?」
「圧倒的にみかんゼリーが良いわね」
「んだよ、つまんねーな」
どうやら五条くんは私の選択にご不満のようで。
一瞬にして太々しい態度の大型猫へと変貌した。
「はい寧々、あーん」
つまんないと言った割には、心底楽しそうに餌付けをする。
「…ん、美味しい…」
プラスチックのスプーンで食べる、なんてことのないみかんゼリー。
それでも甘くて、甘くて、甘くて、とろけてしまうのはゼリーなのか私の方なのか。
「んじゃ、俺も一口」