第6章 クッキーとゼリー
もしかして、五条くんが自分用に買ったものだったのかしらね。
「他のって…」
「スプーンで食うやつじゃねぇと、あーんできないだろ」
「……!そ、そんなことしなくていいのよっ」
テーブルに置かれたゼリー飲料を奪い取りたかったけれど、思うように体が動かなかった。
「寧々、あーん?」
五条くんは独断でみかんゼリーを選ぶと、とても嬉しそうに一口掬ったスプーンを私に向けた。
ベッドの上で上体を起こしただけの私は、顔を背けて拒否をする。
「んだよ、俺のみかんゼリーが食べられないってのか?」
「自分で食べたいのよ」
私の目線に合わせて膝をついた五条くんは、それでもグイグイとスプーンを口元に寄せる。
「口開けろ。ペンギン達はアホみたいに開けてたぞ」
「五条くんにアホと言われるペンギンが可哀想だわ」
差し出されたスプーンを断固拒否していたら、痺れを切らした五条くんがとんでもないことを言った。
「食べねぇならキスするけど?」
「…っ、嫌!」
「んじゃ食え」