第6章 クッキーとゼリー
「寧々はお兄ちゃんっ子だから術式が効きやすいねぇ。さて、僕は帰るよ」
「お兄様っ!許してっ…!ごめんなさいっ…私が悪い子でした…っ、許して…っ、ごめんなさい…っ、ごめんなさ…いっ…!」
「寧々!落ち着け、俺が隣にいる!」
「無理だよ、五条悟。その術式は寧々専用なんだから。キミには解けない」
お兄様に蝕まれていく。
高専までの帰り道で会った時は見逃していくれていた…そんな優しさがずっと続くわけがない。
お兄様は私を支配する。
教え込まれた、叩き込まれた、刻み込まれた、お兄様に服従する心。
逆らってはいけない、私はお兄様のお人形だから。
復讐?そんなこともうしない…っ、しないから…やめて…苦しい…っ。
酸素があるはずなのに、喉が握りつぶされたように息が出来ない。
それでもお兄様に許しを乞う声だけが絞り出せる。
生きながら殺されていく。
なんて私は滑稽なのだろう。
五条くんが隣にいる事で、立ち直れたと思わされていた。
根深く刺しこまれた傷跡が癒えていることなど、あり得ないのに。