第2章 春組『早くも2回目の呼び出し』
通しを見せてもらった。確かに前よりは進展があるものの個人の問題点がだいぶん見えてきた。
終わって拍手をしようとした瞬間、いつの間にか隣にいたおじさんが声を上げた。
「おいおい、ここは幼稚園のお遊戯会場か?」
横を見るといかつそうな男の人が立っている。
いづみと話しているところで私は首を傾げた。
懐かしいようなそうでも無いような…?
いづみの知り合いのようだ。
彼は私の方を振り返ってマジマジと顔を見る。
「おっ、お前はコイツと一緒にいたクソ生意気なガキじゃねえか」
…ん?
男の人は自分がここに来た理由を話している。
そして彼の名前を聞いて思い出した。
「雄三…!あの変な絡みしてくる人!」
「お前なぁ…」
苦笑いをしながらこっちを見てくる。
雄三さんはもう一度通しをするように皆に言った。
途中で雄三さんは何度も手を握りしめている。
多分気になる事があるんだろう。
終わったと同時に立ち上がった。
そしてあの冷たく聞こえる口調で一人一人にダメ出しをしていった。
皆の顔がだんだん曇っていくのがわかる。
全て的を得ている事で多分誰も言い返せないでいることもわかった。
言いたい事を言った雄三さんは颯爽と去っていく。
今日は練習にならないと思ったいづみは皆に練習をやめることを伝えた。
私はそれを聞いて雄三さんの元へ走った。
雄三さんは支配人さんと話し終わった所だったらしい。帰ろうとする彼の手をひいた。
「あ、何だ?」
「いや、何かつい。…久しぶりすぎて」
私が手をひっこめると雄三さんは笑う。そして昔のように頭をグシャッと撫でられた。
「確かに久々だな。…そうだ。あれからお前は演劇をしてんのか?」
「えっと、中高やってました。……挫折しちゃって辞めちゃいましたけど」
ふーん…と頷いている雄三さん。
支配人が首を傾げながら聞く。
「雄三さん、この後用事があったんじゃ?」
「ああ、そうだ。もう行く。…じゃあな」
そう言ってすぐに帰って行った。