第2章 春組『早くも2回目の呼び出し』
「踏んだり蹴ったりだな、ほんとに…」
仕事終わり、呟きながらとぼとぼ帰路を歩く。
頑張って昨日作り終えた資料が入ったUSBを持って行ったと思ったら違うデータで慌てて謝った。
その時に自分のスーツに先輩の飲み物を引っ掛けてスーツをダメにしてしまった最悪な1日だった。
ため息をついていると車が私の横に止まった。
「雨国さん…?あ、良かった。もし帰る所なら送っていくよ」
少し顔を上げると至さんが窓を開けて声をかけてくれていた。泣きそうになりながら頷く。
「良いんですか…?」
「うん。…どうしたの」
助手席を開けてくれて私は隣に座った。
至さんは助手席に置いていた鞄を後ろに置いた。
「劇の練習順調です…?」
車が動き出して私が聞くと至さんは吹き出した。
「あれ、今の感じ劇の話じゃないでしょ。何かあったんじゃないの?」
「…弱音を至さんに話すのは違うかと」
「えー、強いな。俺でも話聞くくらいは出来るけど。…今日は来ないの?寮」
笑いながら言う彼に私は笑う。そんな毎週来られても困るだろう。
「そうですね…。あんまり行き過ぎると嫌われちゃいそ「ちなみに。咲也とシトロンは雨国さんに会いたいって行ってたよ。また教えてもらうとか」
運転をしながら被せてくる至さんに私は笑う。
どう考えても家の方向じゃない。
「…聞いときながら寮に向かってますよね」
「だって俺的にも雨国さんに来てほしいし。監督さんが最近浮かない顔してるからさ」
と言う至さんに感動する。
この人いづみの事も見えてるのか。
何だかんだありながら結局寮に着いた。
「ただいま」
至さんがレッスン室に入ると皆揃っている。
私が後ろから顔を出すといづみ達は驚いていた。
「ええ!?来てくれたの?」
「うん。至さんに帰りばったり会ってさ」
私が笑うと真澄くんが言う。
「…こっそり自分の部屋に連れ帰ろうとしてんだろ」
「なーに言ってるの真澄」
ニッコリ準備運動を始める至さん。
咲也くんたちも笑いながら運動を再開した。