第2章 春組『早くも2回目の呼び出し』
夜ご飯、いづみがよりをかけて作った黄金カレーも誰もおかわりをしなかった。
…これで演劇を辞めるならばそれまで。分かってはいるもののとても怖い。
私は少し沈んだ表情のいづみの手を握る。
いづみは私の顔を見て少し微笑んだ。
いづみを勇気づけようと支配人と私は黄金カレーを夢中で頬張った。
お風呂から上がって私はバルコニーに行った。
今日はいろんなことがあったな。
凄い怒られて謝って、自分の中々値段がする服汚して、なんでか分からないけど寮に来て、懐かしい人に会って…皆落ち込んで。
…大丈夫かな?
もしも辞めたいと思う人が出たらどうしよう。もっと成長できるんだから居なくならないでほしい。
でもそれを今言っても何もならない事を私は、痛いほど知っている。
今日中に資料を提出しなければいけないのでまた一から作っているとバルコニーにいづみが走ってくる。
「雨国!!…どうしよう。皆居ないの!」
青い顔で汗を流しているいづみ。この様子じゃ随分探した様子だ。
私もたった今考えていた事が本当になってしまって冷や汗が流れ始めた。
「とりあえず、支配人さんに皆が帰ってきたら連絡してもらうように言おう。私達はもう少し探そう?」
「うん。…あ、そうだ。…1つ心当たりあった…」
2人で支配人に話す。支配人は「任せてください!」と胸を叩く。それを見て私達は劇場に向かった。
「…誰かいますか?」
「いづみ、あそこ見て」
私は声をかけるいづみの腕を握る。
いづみは急いで舞台に駆けつけた。
私も慌てて追いかけると舞台の上で布団をひいて寝ているみんなが居た。
「…なんか、考えたんだろうね」
「……うん。だろうね」
私たちは小さく呟いてゆっくり離れる。
私達は劇場から出ていった。
「一人ひとりの課題考えよっか」
いづみが呟くから私も微笑む。
「そうだね。相談にのるよ。…あ」
「…?どうしたの?」
少し首を傾げて顔を覗き込んでくるいづみの手を握った。
「今日中に資料送らなきゃダメだった…」
スマホの時計を見て口を開けたままのいづみの手をひいて走って寮に帰った。