第5章 番外編 〘ハロウィン2023〙
「何作ってるの?」
臣くんの横に行って手元を覗き込むと臣くんは少し固まって直ぐに微笑んだ
「雨国さんか。ビックリした…。今は椋と一緒にクッキーを作ってるんだ。」
椋くんはクッキーの型抜きに真剣になっている
そんな様子を見守る臣くんを見ているとつい口元が緩んでしまう
「そういえば2人の仮装可愛いね。」
臣くんは魔導師のようでローブを被っている
椋くんは王子様衣装で2人の衣装には同じ百合の刺繍が入っていた
「だよな。幸は凄いよなぁ。莇も髪のセットしてくれたんだ。」
ほら、とローブを脱ぐとちょっと緩めのオールバック姿の臣くんが…
すると型抜きが終わった椋くんも微笑む
「幸くんは凄いです!…わあ、雨国さんも可愛いですね!黒猫さんですか?」
目を輝かせる椋くんに私は少し照れながら頷く
すると臣くんはハッとしたように私にいくつかのカップケーキをお盆に置いて持たせた
「お腹をすかせてる奴らにあげてくれ。雨国さんからなら喜ぶだろ。」
そう言って私は2人に見送られながら談話室を後にした
どこに行こうか考えていると中庭から何やら賑やかな声が聞こえる
「私が振る舞う紅茶は美味しいかね。」
「美味しいです!誉さんは紅茶を入れるのがほんとに上手ですよね。」
どうやらお茶会をしているようだ
静かに近づいて横からカップケーキを差し出す
「こんにちは。ユニコーンさん達。」
2人は一角の角が生えていてカラフルだけど上品な衣装を着ている
こっちを振り返って紬さんが微笑む
「雨国さん。…いえ、可愛らしい黒猫さん。どうもありがとうございます。」
私の演技に合わせてくれるようだ
誉さんも空いているティーカップに紅茶を入れて私に渡してくれた
「こんにちは。黒猫さん。少し混ざっていかないかい?」
カップケーキを手に取って椅子を用意してくれる
ここの空間が上品すぎてドギマギしながら座ると2人は笑ってくれる
少し話してお茶会から席を立つ
「もう行ってしまうのかね。」
「はい。他の人にもお裾分けしに行くんです。」
「少し寂しいですけどお元気で。」
眉を下げる誉さんと最後まで役になっている紬さんに見送られながら歩くと花壇の近くに人影が見えた