• テキストサイズ

A3! 総監督の友達兼右腕

第4章 春組『初めての舞台』


今日はいよいよ初公演が始まる。
少し緊張している彼らを私ははご飯だけ作って無言で見つめていた。


そして劇場に人が入り始めるのに続いて私も隅の方の席へ座った。
何故か私も緊張していてずっと手を握っている。


「皆…。大丈夫。大丈夫」


1人で小さく呟いてしまって慌てて口を抑えた。
近くに誰もいないことを確認して今度は静かに落ち着いて開始の合図を待つ。

そして、始まった。





「ありがとうございました!」


1人の拍手から、どんどん大きくなっていく。
ハッとして私も拍手をする。感動してしまって放心状態だ。

しばらく稽古を見ていなかったからなおのこと、皆の演技に入り込んでしまった。

…やっぱり芝居って良いな。

公演が終わって周りを見渡すと出ていく人達の顔は満足そうで私も嬉しかった。




興奮を抑えるために少し外を歩いてから寮に帰ってレッスン室に向かうと皆が疲れきったように眠ってしまっていた。


「あ、おかえり。どうだった?」


いづみに聞かれて私はすぐに答える。


「もう最高だよ!ほんとに…!」


私はいづみに抱きつく。いづみは少し笑って抱きとめてくれる。そんな彼女を見て私は呟いた。


「…いづみが皆を集めて熱心に指導したからだよ。皆嬉しそうな表情だった。いづみ達は春組皆にも、観客の皆にも幸せを分けてくれたんだよ。ありがとう」


いづみは言葉を詰まらせた。
鼻を真っ赤にして笑ういづみに泣きそうになる。



私は今日のロミジュリ公演の感想を皆に伝えていると支配人さんが扉を勢いよく開けて入ってくる。


「た、大変です!!」


「ふぎゃっ!?」


焦った管理人さんの声を聞いて咲也くんを初めに皆が起き始めた。


「どうしたんですか…?」


「せ、せせせ、せん!!」


「せんべい…?」


噛み噛みの支配人さんにいづみが聞く。
ブンブンと首を横にふってまた口を開いた。


「せんっ、千秋楽のチケット、完売しました!」


誰かがハッと息を飲むのが分かった。
まだ起きていない真澄くん以外の皆が顔を見合ってだんだん嬉しそうな表情になっていく。


「…やったぁぁあ!」


「よっしゃぁあ!」


咲也くんが一番に声を上げた。
すると綴くんも真澄くんに抱きついて喜ぶ。
シトロンさんは至さんに抱きついた。


/ 42ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp