第3章 春組『心機一転』
今日は早く仕事が終わった。
……残業もないとかいつぶりだろう。
至さんに今日は迎えは要らないことを連絡する。
『なになに?今日は早いじゃん。今日くらいゆっくり休みなよ』
と返事が返ってくる。
分かった……と打ってから真澄くんからも連絡があった事に気がつく。
『朝、監督怒ってた?』
『怒ってないよ』
『俺、悪いってわかってる』
すぐに返事が…。よほど心配なんだなと思った。
『今から帰るからいづみと直接話そう?私も付き合うから』
『今最寄りの駅にいる』
その文を見て私も駅に向かった。
駅でポケットに手を入れてスマホを見ている真澄くんを見つけた。改めて見たら凄い顔整ってるな。
「真澄くん。遅くなってごめんね」
走って向かうと真澄くんは私を見るが、すぐに目を逸らされる。
この様子じゃまだまだ整理できてないな。
「全然待ってない」
「…いづみと会って話せそう?無理そうならちょっと遠回りでもする?」
「…………遠回りする」
「うん。何か買おう。お腹すいたから軽食ね」
こくんと頷いた真澄くんを見て私も頷く。私達は駅を出てコンビニに向かった。
2人で無言で歩いていると女の子の声が聞こえる。
「え、真澄くんだ!握手して!」
「チケット買ったよ〜!」
キャピキャピした声だ。
前に走ってきた子達の制服を見て真澄くんと同じ学校の子だとわかる。
女の子達がはしゃいでいるのを横目に私は聞く。
「真澄くんのファンの人?凄いね」
「…知らない」
真澄くんはため息をつきながらまた歩き始める。すると女の子達は私達を追ってくる。
「てか、このおばさん誰?マネージャー?」
おばさん……。深く突き刺さる。
苦笑いをしながら答えた。
「んー…、監督の友達かな。家事したりして練習にも付き合ったり……まあ雑用みたいな?」
出来るだけ笑顔で話すと女の子達は顔をしかめた。
「え、それって真澄くんに近づくためじゃないよね?監督にお願いしたんじゃないの?」
「…え」
予想もしない事を言われて頭が真っ白になる。
「サイテー。私利私欲?いい歳して男子高校生狙うとかヤバすぎ」
「警察沙汰じゃん」
ケラケラ笑っている女の子たちに真澄くんは手を振りかざした。
「お前ら…っ!」