第3章 春組『心機一転』
「俺。起きてる?」
真澄くんの声が聞こえる。
私がドアを開けると真澄くんは中に入ってくる。
「最近の俺ってどう?」
神妙な顔立ちで聞いてくる。
私は最近練習を見ていないから2人っきりにする方がいいかな。
しばらくの間部屋のドアの傍に座り込んで待っているとドアが開いた。
真澄くんは私を見てすぐに目を逸らした。
「……どうしたの?」
「なんでもない」
顔が曇っている真澄くんに聞くも教えてはもらえず。でもいづみと何かあったんだろうなとは思った。
自分の部屋へ向かう真澄くんを見て私も部屋に入る。すると少しため息をついているいづみがいる。
私の顔を見て少し笑った。
「ちょっと厳しくしすぎちゃったみたい。…明日謝るよ。気にしないで」
そう言って背を向けて布団に入るいづみに私は何も言わなかった。
朝早く起きて皆が練習してる間、支配人と他愛もない話をしながら朝ごはんを作る。
「どうですか?チケット」
「お陰様で大分埋まってきましたよ!まあ、まだ全部は埋まってないんですけど」
「あー…」
私が少し項垂れると支配人も呟く。
「あーあ…」
「支配人…。あーあ、はちょっと諦めちゃってる感ありますよ」
2人で苦笑いをしていると談話室に誰か入ってくる。
……朝練の時間だよね?
支配人も首を傾げている。
真澄くんが制服のボタンを止めて椅子に座った。
私は用意していたご飯を並べる。
「…お味噌汁はどうする?」
「………飲む」
昨夜の機嫌が治っていないようだ。
お味噌汁を用意して机に置いた私は真澄くんの向かいの椅子に座る。
朝ごはんを食べている真澄くんを見つめる。
「昨日何かあった?」
「何も無い」
「……いづみ」
そう言った瞬間箸を進める手が止まる。分かり易すぎて少し微笑んでしまった。
私の顔を見てムスッとする真澄くんに言う。
「いづみはいつだって皆の事考えてるからね。真澄くんに厳しく言ったのも真澄くんの事が好きだからだよ」
「……。ご馳走様。もう行く」
「うん。行ってらっしゃい」
ご飯を食べ終わって椅子から立ち上がる真澄くんを見送った後私も支配人と一緒にご飯を食べ始めた。