第3章 春組『心機一転』
「ほんっとにごめん!」
深々と頭を下げると綴くんは私が放ったダンボールをお持ち上げて玄関へ向かっていく。
「だから俺がするって言ったんすよ。…素直に俺にもカッコつけさせてください」
そう言いながら車に積む彼にぐうの音もでず、小さく頷く。
すると「ほんとにわかってんすか」と笑われた。私は何度も頷いて伝える。
すると綴くんも微笑んで頷いた。
「今日はありがとう」
寮に着いて玄関前でお礼を言う。
至さんはダンボールを持ってドアを開けた。
「まあまあ、そんな律儀に」
そして中に入っていく。
それに続いて私達も中に入る。
「おかえり〜」
「おかえりなさい!荷物運ぶの手伝います!」
皆が迎えてくれる。
荷物を運んで貰う途中シトロンさんがニコニコしながら近づいてきて言った。
「今日からここが雨国のハウスね!」
「…そうですね。家族です!」
私がそう言うと皆は暖かく微笑んでくれていた。
今日も仕事から帰ると以前と燃えている皆がいた。
晩御飯を食べる直前まで真剣に練習。
部屋に入っていづみに聞く。
するとGOD座の人達に絡まれたことを聞いた。
GOD座はビロードウェイの中で1番人気の劇場。そんな大きな場所にそんなくだらない事する人いるんだなと思いながら話を聞いているといづみはストリートACTをしたと言った。
「え、……大丈夫?」
「何それ失礼」
笑いながら言われて私は急いで弁解する。
「ごめん。そういうつもりじゃなくて」
「はは、分かってる。大丈夫だよ。皆もいたから心強かったし。まあ、GOD座の人には刺さらなかった」
いづみは少し頬をかきながら微笑む。当たり前だよね…、と自嘲気味に笑ういづみの背中を撫でる。
「…いづみは強いなぁ。凄いよ」
「ええ?雨国も強いよ。社会に揉まれながら生きてるって感じする」
「マジ?てかそれ褒めてる?」
「褒めてる褒めてる」
2人で言い合いながら笑う。
この気の抜けた感じで話すのはいづみとしかできなくて、とても楽しい。
その後も演劇時代の話をしながら寝ようとするとコンコン、とドアがノックされた。