第3章 春組『心機一転』
「…んじゃあ、私帰るね」
立ち上がると綴くんが私を止める。
「待って。……俺が言って良いのか知らないですけど、毎週来てくれますよね。雨国さんここに住めないんすか?」
シトロンさんも目を輝かせる。
「おー、そしたら雨国もファミリーね!」
私は少し考え込んだ。ここは今の職場から遠い。
「いや、仕事がある日私何の役にも立たないよ。朝から夜までだから練習も多分参加出来ないし」
「別に良い。アンタがここに住みたいかの話だろ。アンタがいる方が監督も楽しそうだし」
真澄くんが呟く。咲也くんも笑って頷く。
「真澄くんも言ってるくらいですし。監督、雨国さんが住む場所はないですか?」
「ん?私の部屋で良ければ用意できるよ」
いづみもニッコリ笑ってこっちを見た。
皆がこっちを見ている……。
「いや、でも…仕事場遠いし」
「余程の用事が無い限り俺が送ってあげる」
至さんはこれで言い逃れできないだろ、と言わんばかりの笑顔で言った。
「………明日荷物だけ、取りに行きます」
押しに負けてしまってそう言うと綴くんが軽くガッツポーズをした。
「っしゃ。雨国さんの料理食える!」
「……カレーも良いのに」
「でも、たまにで良いね」
皆は私を見つめる。そして咲也くんが私の前に来て言った。
「これからは俺達をよろしくお願いします!」
朝早く起きる。
そして私はキッチンに立つ。
簡単な朝ごはんを作ってから部屋に戻って仕事に行く用意をした。
「ご馳走様!行ってきます」
綴くんが走って出ていったのと同時に咲也くんも真澄くんを連れて学校へ行く。
「行ってきます!」
「……」
咲也くんと半分寝ている真澄くんに手を振った。
玄関まで送っていたいづみが私と至さんを見て少し慌てながら言った。
「2人とももう時間じゃない?…大丈夫ですか?」
私達は時間を確認して慌てて立ち上がった。
玄関にダッシュする。
「行ってきます。監督さん」
「行ってらっしゃい」
私が何だか気恥ずかしくて言えないでいるといづみは見越したかのようににっこり笑った。
「行ってらっしゃい。雨国」
「……行ってきます」
至さんは笑いながら私たちを見ていた。