第3章 春組『心機一転』
私が教えるより上手くなってる…。
少し虚しい気持ちになりながらも微笑む
「真澄くん。歩み寄ってくれてるんだね」
いづみも私の横で見て微笑んでいた。
私達は顔を見あってから頷く。
「これなら問題ないよ!間に合うかも」
そう言うと咲也くんは、
「やったぁあ!」
と喜んでいる。
それを見て他の4人も微笑んでいた。
夜、衣装が届いたと聞く。
私は部屋で仕事をしていたから慌てて向かった。
衣装係の人は中学生とか聞いてたし見てみたい。
「衣装!……と、終わっちゃった?」
「オー。洗濯機までいたヨー」
ドアを開けるとシトロンさんにそう言われる。
…洗濯機?首を傾げると至さんがハッと閃く。
「ついさっき、と見た」
「あ、なるほど……。うわー、衣装見たかったな。その男の子も見てみたかったし」
私が顔を覆うと皆は口々に言う。
「アイツはうざい。変な名前つけるし」
「悔しいけど真澄に同意」
「俺もなんか変なあだ名つけられたわ」
「私もインチキ言われたヨ」
私は皆の声を聞いて苦笑いをする。
咲也くんといづみは笑っている。
「でも、きっと良い子だよ。幸くん」
「そうですよ。お仕事はしっかりしてますし」
2人の弁解にまた笑ってしまった。きっとその子は真澄くんより口が達者なんだろうな。
「それより、チケットがね…?」
考えているところに急に真剣に言われる。
私はその一言で売れていないことが分かった。
「……何枚売れた?」
恐る恐る聞く。
「4人プラス幸で5人」
真澄くんが言う。
私はまた顔を覆った。
「えーっと…。確か満席にするんだよね。……とりあえず私も入れて6枚」
「すごい微量」
至さんが笑っている。
「俺のブログでも呼びかけとくよ」
「ブログ?」
いづみが聞くと至さんは頷いた。
「万人はいるからね」
「すげ…」
ここで感心してるけど万一満席にならなかったらこの劇場もう終わりなんだよな。
私は唸って考えた。
「……あっ!ストリートACTだ!」
「いいね。宣伝になるし、練習にもなる!」
いづみもすぐに賛成してくれる。
これならすぐできるし、明日からビロードウェイで試してみるべきだろう。