第3章 春組『心機一転』
午後も2人と練習をする。
「違う。そこはもっと素早く動こう」
私は流しで殺陣をする2人を止める。
真澄くんは基本的には大丈夫だけど咲也くんに少し無理があるかもしれない。
「…はぁっ、はぁ、すいません…!」
「ううん。朝より全然いい。…疲れるよね、休憩しよっか」
謝る咲也くんにそう言うと
「足引っ張るな」
と真澄くんが言った。
私は真澄くんの肩を軽く叩く。
「その言い方は良くないかな」
「……」
「ごめんなさい…」
私と真澄くんを見て咲也くんは目を伏せる。
私が首を横に振ると真澄くんは私達と少し離れたところで休んだ。
練習を終えていづみが部屋に入ってくると私は既にベッドに座っていた。いづみ分かっているみたいで横に腰かけた。
「…殺陣やめよう」
いづみのその言葉に頷く。
話を聞くといづみが今さっき練習場に行った時にも咲也くんが練習をしていたらしい。
ここまでいろいろ手を回しすぎると良くない。
1番嫌な作品ができてしまう。
「そうだね。……大変だなぁ。公演って」
「ね」
2人で決めたものの、咲也くんの落ち込む姿が目に見えて私たちは肩を落としてしまった。
朝練に向かうと、いづみが皆に集合をかけたところだった。
「殺陣を演出から外します」
咲也くんと真澄くんの顔色が変わった。
他の3人は同意している。
すると真澄くんが反論した。
「何で?俺の殺陣、アンタもコイツも褒めてくれたのに」
いづみと私の方を見ながら言った。いづみは真澄くんをなだめる。
「次、機会があればしてもらうから」
「ロミオ役を誰かと交換すればいい。そうすれば殺陣もマシになるだろ」
その言葉に私は目を見開く。
「ちょっと」
「嫌だ……。嫌だ!絶対に嫌だ!!ロミオ役は俺の役だ!!」
皆が咲也くんを見た。咲也くんはハッとして皆の顔を見つめる。
「おい、落ち着けよ」
綴くんが咲也くんをなだめる。
「お前の当て書きだって言っただろ?」
「真澄もこだわりすぎ」
至さんも真澄くんの肩を叩く。
真澄くんは少し目線を下に落とした。
「あの…、俺できますから。だから、殺陣をやらせてください」
咲也くんの気持ちに負けたのかいづみはしぶしぶ頷いた。
「無理はしちゃダメだからね」