第3章 春組『心機一転』
「……そんなリアルじゃなくて良いでしょ」
負け惜しみでそう呟くと竹刀で頭を叩かれた。
何が起きたのか分からなくて頭を抑えながら口をパクパクしていると雄三さんが私の首に何度も竹刀を当てる。
「…………お前、そんな中途半端で演劇やってきたのか?俺はそんな甘ったれた事」
「分かってる…!単に悔しかっただけだし」
雄三さんのドスの効いた声につい目をそらす。
するとシトロンさんが嬉しそうに微笑んだ。
「私、サムライ見てるみたいでタノシカッタ!」
「俺も。ほんと短時間なのに圧倒される」
続いて至さんもそう言う。雄三さんは私から目を離して皆の方に向き直る。
「チッ…。こんなんで満足してんじゃねえぞ」
……何で急に土曜日に呼び出されてこんな無茶苦茶に応えてまで貶されなきゃいけんのだ。
私は雄三さんを睨みつけた。
「そもそも!あの言い方悪いでしょ」
「ん?何か言われたの?」
いづみがキョトンと首を傾げる。
私は雄三さんの声を誇張して真似をした。
「春組の力になりてぇなら…、とか。これで来ない方がヤバいでしょ!」
「俺は何も違ったこと言ってねえ」
ゲンコツで頭を軽く殴られる。
そしてニヤッと笑って言われた。
「まあ、来なかったらそれまでって話だしな」
「……来ますよそりゃ。春組の為なら」
下を向いてボソボソと呟いていると咲也くんが目を輝かせてこっちを見る。
「嬉しいです!疲れてるのに来てくれてありがとうございます!!」
咲也くんに見つめられて気恥ずかしくなった私は照れているのをバレないように手を叩く。
「はいはい!練習しよ?」
立ち上がると皆も持ち場につく。
雄三さんは荷物を持ってドアに向かった。
「俺は帰るからな。ちょっとはマシにしといてくれ。特に座長」
そう言って帰ってしまう。そして私達はまた朝から練習をした。
いづみは綴くん、シトロンさん、至さんと。
私は咲也くんと真澄くんと。