第3章 春組『心機一転』
仕事に行って今日も仕事をする。
時計を見ると、もう21時を回っていた。
…そろそろ至さんが皆に話していることだろう。咲也くんとか凄いショック受けてそうだな。
次の日もまた会議用の資料作りを頼まれる。
……私は貴方の雑用係では無いんですけど。
イライラが募りながらもにこやかに仕事を受け継いでしまった私に1番腹が立つ。
昼休みと言うのにサンドイッチを片手に作業をしているとスマホが鳴る。
誰かも確認せずに出た。
『もしもし?』
『もしもし、雨国さん?今昼休み?』
至さんの声だ。私はサンドイッチを置いて片手で入力作業をする。
『ですけど、ちょっと仕事が立て込んでるんですよ。ほんと申し訳ないんですけど手短に…!』
『朝、春組のヤツらから可愛い劇見せられて。俺、今作までは残ることにしたんだ。早く言っとこうと思って。じゃあ…』
ほんとに手短に終わってくれる。
切られる手前に慌てて言った。
『嬉しいです!仕事頑張れます…!!』
『ん。こんな事で頑張れるの?』
フッと笑いを含んだ声で聞かれる。
私も笑ってしまった。
『はい。もう私は春組のファンですから』
『…第1号だね。じゃあ、仕事頑張れ』
そう言って電話が切れる。
…これで皆のロミジュリが見れるんだ。
そろそろチケットも貰わなきゃ。
皆の事を思い出して私は頬を軽く叩いた。
「っし…。頑張る!」
前のデスクの方に少し冷たい目で見つめられながらも私はまたサンドイッチを咥えて仕事を再開した。
今週も来た癒しの金曜日。
いつも通り今週も良いように使われ続けた訳で、自分のご褒美にコンビニでデザートを買って家に帰る。
今週は呼び出しも無いしゆっくり寝れるかな…?
そういえば、チケット販売もうすぐするよね。
お風呂から上がってMANKAIカンパニーのサイトを開くと想像よりもオシャレなデザインが目に入る。
「おお…。凄い。誰が作ったんだ?」
いづみは多分無理だし支配人も無理だろう。
劇団員の誰かが作るの好きなのかな。
そんな事をぼんやり考えながらいつの間にか眠りについてしまった。