第6章 子守唄
「いや、アレだ。ほら、オメーもあのドラマ見て怖いんじゃないかなー、と。あ、俺はビビってねーけどな。けどオメーが怖ぇだろ? 銀さんは優しーから、怖がってる女の子は一人に出来ない訳よ。」
成る程、と菊は納得した。さっきまでは目蓋が落ちそうだったと言うのに、今の銀時は目が冴えている。恐らく布団を敷いてる間に、またドラマのラストシーンでも思い出したのだろう。次から次へと隣に並ぶ理由を述べている。
「オメーあのドラマ見てもなんの反応もしてねぇけど、銀さんにはお見通しだから。いつもみたいに振る舞ってるけど怖がってるのバレバレだから。いやー、しょーがねーなぁ。よしよし、なんなら手でも繋ぐ?」
「ええ、お願い。」
「え、嫌だ? ったく、後で泣きついてきても知らね………………へ?」
銀時は耳を疑った。今しがた聞こえた菊の答えは幻聴だったのだろうか。
「手を繋ぎたいの。駄目?」
意外な切り返しだった。銀時はまさか、本当に菊が手を繋ぐ事に同意するとは思っても見なかったのだ。呆気にとられて銀時は思考と共に停止する。
逆に菊はそんな銀時を見て少し笑った。今まで数えきれないほど銀時に頼ってきて、それなりの時間を共に過ごしてきたのだが、銀時の弱点と呼べるものを今まで見つけた試しがなかったのだ。それが突然、彼の弱みを知る機会が訪れた。
他の三人と一緒にテレビを見ていたが、菊は皆が感じたほどドラマは怖く思わなかった。主人公の男が女に呪い殺されたのは自業自得だと思ったし、似たような立場にいる菊はむしろ元遊女を同情していた。己が彼女の立場であれば、同じ事をしていただろう、と。