第8章 子の心、親知らず
素直に譲ってくれると思いきや、沖田は見返りを要求してきた。突然の事で銀時は反発する。
「はあ? 税金泥棒にこれ以上わたす金はねーぞ!」
「旦那ァ、それは税金を払ってから言って下せェ。それに金はいりやせんよ。俺の懐は旦那のとは違って年中温かいんでねィ。」
「腹立つ言い方だなー、オイ。で? 何が欲しいの?」
「姉上の着物を着た『姐さん』とやらに、近い内に会わせて下せェよ。それが条件でさァ」
「あぁ? 何でだよ」
確かに着物は頼んだが、沖田が女に興味を持つのは珍しい、と銀時は思った。普段は「女扱いする価値がある女性は姉上だけ」のような態度をする少年が、菊に興味を示すのも若干の恐怖があった。まさか菊に会って調教をしようとでも企んでいるのではないか、と焦りが生まれる。そんな銀時の訝しげな視線に、沖田は肩を軽く竦めて笑った。
「大した理由はありやせんよ。ただ、あんな馬鹿デケー声で泣くガキの『親』の顔が見てみたいだけでさァ」
それだけ言えば、沖田はあっさりと空き地から立ち去って行く。どうやら本当にただの興味本位で菊に会いたいようだ。機会はいつ来るか分からないが、その時がくれば会わせてやっても良いかもしれない。菊が外の世界を知るためにも、(ドSとは言え)色々な人物に会わせたほうが良い刺激になるかもしれない。
そう自己完結した銀時は、万事屋を出るための理由であるプリンを買いに道を進んだ。