第6章 子守唄
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一方、男は行方不明になった女を気にも留めず、やっと一人になれた家で寛ぐ。しばらくは女と、女にさせていた家事に困る生活に戻ってしまうが、致し方ない。恩を着せて手に入れたあの女にも飽きてきた頃だ。余計な飯を与える必要が無くなっただけでも感謝するとしよう。そう思いながら、男は寝室へと足を踏み入れた。
そのまま寝間着に着替え、電気を消して布団に潜り込む。女がいなくなって広くなった部屋を堪能しながら、男は大きな欠伸をした。相手をする女が居ない今、自然と微睡むまで彼はただ薄暗い部屋の天井を眺める。
ふと、夜目がきいてきた男はある事に気づく。天井の角に、蜘蛛の巣がはびこっていたのだ。
こんな真冬に季節外れな女郎蜘蛛とは薄気味悪い。あの女、出て行く前に掃除でもすれば良かったものを。どこまでも役に立たない売女だ。だが蜘蛛は明日の朝にでも殺せば良い。今夜はもう寝よう。
瞼はゆっくりと閉じてゆき、男は夢の世界へと旅立って行った。