第5章 貴方に教わる命の繋ぎ方
お米の準備の仕方を教えてやれば、銀時は菊の手を引いてキッチンを歩き回る。棚や引き出しを一つ一つ開けば、中の食器や料理器具の場所を教えて行く。どれも初めて目にするような物ばかりで、菊は目を輝かせながら使い方を銀時に尋ねた。一度に全ては覚えられないだろうが、銀時は丁寧に器具の説明をする。他にも、食料や調味料の置き場所を教える事も忘れない。狭いキッチンを一通り見終われば、壁に掛けられた時計の針が5時過ぎを指していた。どうやら丁度良い時間で菊に万事屋のキッチンを紹介できたようだ。またもや菊の手を引き、業務用の炊飯器のボタンを指差す。
「押してみ。」
菊の手でピッ、となった炊飯器は己の仕事をし始めた。後は炊きあがるまでに他の料理を作るだけだ。銀時は先ほど料理器具と紹介する時に出しっ放しにしていたフライパンを手に取り、コンロに乗せる。
「次は魚だな。焼き魚は作るのが楽だから安心しろ。」
また手本を見せるとばかりに銀時は冷蔵庫から魚の切り身を四枚出して、二枚だけ塩で下ごしらえをする。それに習い菊も残りの二枚に塩をかけるが、覚束ない手付きで均等には塩がかかりにくい。やはり料理をする者と、そうでない者では処理の早さと正確さが違う。
「やっぱり、手際が良いのね。」
菊は思った事を口にした。
「そうでもねぇよ。俺のは男料理だから大体が適当だ。新八の方がもっと凝ってるモン作れるけどな。みそ汁からして違いが分かんだろ?」
思い返せば、確かに同じみそ汁でも二人の味は違っていた。銀時のは自称しているように大雑把な男料理である。味噌の加減も雑なため、不味くはないが塩気が多かったり少なかったりと区々だ。中に入ってる具も大きめに切られている事が殆どだった。対して新八は均一の味噌味であり、具も一口大にちゃんと刻まれている。主婦顔負けな料理が出来る、家庭的な子だ。