第5章 貴方に教わる命の繋ぎ方
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「おら、さっさとメシ作っぞ。まず米十合から準備だ。」
「いつもそんなに作ってたのね。」
「六合は神楽の底なし胃袋の分だからな。それでもおかずを入れてやっと腹八分だとよ。あ、新八がいねぇ時は九合な。」
銀時は一升のご飯が炊ける業務用の炊飯器を開けながら指示を出し始めた。手を洗い、まずは手本とばかりに棚から取り出したステンレスボウルに五合だけお米を入れる。水道の水を足しながらザリッザリッ、と掻き混ぜれば水を捨ててを四度ほど繰り返す。その工程が終われば、銀時は炊飯器の中の釜に米を流し入れた。
「残りの五合を入れて洗ってみろ。一気に十合は重てえから、半分づつやりゃあ良い。」
ほら、やってみろ、と言えば銀時は先ほど使っていたステンレスボウルを菊に渡す。見よう見まねで同じようにお米を入れて洗えば、横からそれを見守っていた銀時に褒められる。
「うめぇじゃねえか。んじゃ、そいつもアノでかい釜に入れてくれや。」
初めての米研ぎに褒められたからか、菊の頬と耳が薄桜色に染まった。簡単で単純な作業だと頭では理解しているが、いざ褒められると心が躍る。料理など、一生経験する事のないものだと思っていたのだから尚更だ。菊は今までに感じた事の無いほどワクワクした気持ちで水を切ったお米を釜に入れた。
「うしっ、次は水な。ここの線が見えんだろ。十合の時はここまで、んで、九合の時はその下の線までだ。俺ァ、米は一時間くらい水に浸してるから、5時にまた料理の続きな。後はこのスイッチ入れりゃあ、勝手にやってくれる。」
「水に浸すと味が変わるの?」
「味も美味くなるし、米も水分含んでふっくらになる訳よ。」