第5章 貴方に教わる命の繋ぎ方
「時の流れと自分の無知さを思い知らされるわ。」
「これから覚えりゃあ、気にする事ねぇだろうがよ。しっかり教えてやる。」
「そう、ね。ありがとう。」
嘲笑を一瞬だけ浮かべたものの、銀時のフォローに菊は微笑みと共に礼を言う。こうして静かながらも素直にものを言うようになった菊をよく見るようになったのは喜ばしい事である。万事屋に来たばかりの頃は無表情で無愛想が通常運転だったが、今はコミュニーケーション方法が豊かだ。喜怒哀楽のはっきりした表情と柔らかい声のトーンは彼女に人間らしさを与えた。口調も吉原で使っていた江戸弁でも、月詠に対して激情を表すために使った荒い口調でもなく、物腰の柔らかい女性らしいもので喋るようになり、彼女自身の魅力もかなり上がった。吉原炎上直後の絶望を抱えていた女とはまるで別人だ。少なからず、生きる事に前向きになった菊に銀時も優しい笑みを浮かべる。