第5章 貴方に教わる命の繋ぎ方
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「三品も教えてくれるの? ……私にもちゃんと出来るかしら。」
菊は正直、一度に三種類もの料理を作る事に不安を覚えていた。料理の簡単さを理解出来ていなかったからだ。今までの食生活を見れば当然な考えかもしれない。質素で不味い食事が当たり前。腹に何かを入れられれば上等であり、腹を満たせれば幸運である。味気ない食事が常であった以上、菊にとって新八や銀時の料理は想像できないほど高度な過程があるように思えた。
「んな難しくもねーよ。俺だって適当にやってあの味なんだ。お前ならもっと上手く出来るさ。」
強張る菊の表情を見て、銀時は軽く笑い飛ばす。洗濯と食器洗いをする菊を見ている限り、彼女は与えられた仕事を全力で取り組む事が出来る人間だ。ちゃんと一から教えれば、後は一人でも遣り熟せるだろう。
「あのガキ面倒見る代わりに、これからお前に雑用してもらうんだ。みっちり料理のやり方を仕込んだら、これから料理(コレ)もお前の仕事になんだからな。頼りにしてるんだぜ? ま、今は少しずつ覚えりゃあ良いさ。」
押し付けるような言い方だが、それとなく菊は万事屋の一員として受け入れられている事を伝える。趣旨が上手く伝わったのか、菊も安堵したように肩を下ろした。その様子に銀時は目を細めながらこれからの事を話す。