第4章 あたたかな 〜銀時篇〜
「昔のよしみじゃき、金ならワシが払うぜよ?」
「いや、いい。俺が払う。」
受話器を持ち上げて20分は経っただろうか。事情を聞き、進んでゆく話の中、辰馬は薬代を請け負う役割を買って出た。しかし、それに対する銀時の早い切り返しに、辰馬は目を見開きながら驚く。貧乏人の金銭感覚を持ち合わせている銀時の口から断りの意が出てくるとは思わなかったのだ。 万事屋も裕福ではないのは知っているし、珍しい銀時の頼み事だ。銀時が辰馬をどう思っているかは分からないが、辰馬は友として手助けはするつもりでいた。事情も事情で深刻なようだし、手にしようとしている薬も一般では手が出しにくい程の値段である。
「遠慮なんて、おまんらしくないやか。万事屋も大変なのは知ってるきに。」
「うっせぇ。良いから、俺が払うっつってんだろ。」
それでも銀時は己で払う事を主張した。その揺るがない意思を尊重し、辰馬は銀時を説得するのを諦める。代わりに、なるべく値切れる所まで値切る事を銀時に約束する。手に入る事自体、難しい任務になりそうだが、辰馬は誇りである商いの技術に全力を尽くすつもりでいた。それには銀時も反対せず、ぶっきらぼうながらも感謝の念を伝える。その後、銀時は必要な薬の効果をいくつか述べ、二人の会話は終わった。