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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第4章 あたたかな 〜銀時篇〜


「…姐さんは、子供を作れる?」

「…。」

「やっぱり駄目なんだ。」

 沈黙が語ったのは否という答え。目に見えて揚羽は落ち込んでいた。たとえ菊が家事を覚え、一般人として立派に生きてゆけて、そして最愛の伴侶を手に入れても、彼女には肝心の家庭を作れない。吉原で働いていた最後の数年、菊が懐妊した事は無い。揚羽はその事実でもしかしたら菊は石女になってしまったのではないかと推測していた。中途半端な中絶を経験しなくて良かった反面、菊が子供を授かれない事には、やはり心が沈む。そんな揚羽の頭を銀時は揉みくしゃにするように撫で回した。

「…ガキならもう、一人いんだろ。」

 少女の胸中にどんな思いがあるかは銀時に図りかねたが、おおよその想像は出来た。きっと菊が「血の繋がった子供」を持てない事にふさぎ込んでいるのに違いない。自分では菊を幸せにする「子供」としては役不足とだ感じているだろう。しつこいくらいポジティブな少女を落ち込ませる事が出来るのは、やはり菊だけなようだ。しかし揚羽本人がそう思っていても、周りからはそれが勘違いである事は明白だった。女と少女が共に過ごす時だけ、別人のように菊の表情は優しくなるのだから。菊が正常な子宮を取り戻したとしても、揚羽を蔑ろにする事、ましてや手放す事などありえない。

 しかし、それはそれである。銀時は少女から、菊の願いと言う情報を手にした以上、菊の体を完全に癒すのに専念する事にした。口では言わないが、心奪われた事実に変わりはない。多少の無茶はしても、惚れた女の願いは叶えたいものである。否、銀時はそんな意思すら、自覚していないのかもしれない。ただ、あまりに悲しい姿である菊に、普通の娘になる道を与えたいだけだ。
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