第3章 あたたかな
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いつもなら銀時と神楽が隣同士で座り、向かいに新八が座る席順だが、人が増えた事により席は大人側と子供側と分かれた。揚羽は新八と神楽の間に腰を落ち着かせ、菊は銀時の左に座った。食事と人が全員揃った所で菊以外の者が一斉に手を合わせて食べ始める。一泊遅れて菊も「いただきます」と言い、箸に手を伸ばした。しかし、それ以上箸は動く事はなかった。よく見れば揚羽も勢い良く手を合わせていたが、肝心の料理にはまだ手を出していなかった。ただ食事を眺める菊と揚羽が心配になり、新八が声をかける。
「あの、もしかして食べれない物でしたか? それなら無理して食べなくても良いですよ?」
「そうネ! もし食べないなら、私が代わりにたべるアル。ダメガネもまた料理作り直せるヨ。気にする事ないネ!」
「誰がダメガネだァァァ!! 」
ぎゃいぎゃいと口論が始まった。騒がしい光景も菊の目には新鮮に映る。けれど騒々しい状況が長く続く前に、菊は静かに口を開いた。
「違うわ。だた、豆腐とわかめ以外の物が入ったおみそ汁を見たのは久しぶりで…。」
その一言で部屋はしんっと静まり返った。沈黙を破るように、揚羽は料理を作った新八にみそ汁の中身を尋ねてみる。
「あ、うん。えっとね、大根とエノキ、それとジャガイモ。…すみません。あまり物で作ったんで変な組み合わせですよね。」
後半は菊に向かって、新八が申し訳なさそうに言う。しかし菊はおぼつかない手取りみそ汁を持ち、少し痛む手を我慢して箸で具をつかみあげた。