第3章 あたたかな
「良かった。目が覚めたんですね。」
揚羽と抱き合う菊に声を掛けたのは新八だった。男だと認識した菊は警戒して顔を一瞬歪めたが、少年の瞳には純粋な光が輝いていた。それを見て、菊は警戒を緩め、彼の言葉に頷く。
「初めまして、僕は志村新八です。」
「私は神楽アル!」
二人は菊に自己紹介を続け、歓迎の意を伝えた。菊の反応は薄かったが、明るい二人と揚羽のおかげで気まずさは一切無い。今まで感じた事のないほど平和な雰囲気に、菊は不思議な安らぎを覚えた。
時間もちょうど夕飯時になり、新八はその場の者に居間の机に集まるよう指示する。指示と同時に動いたのは今まで黙っていた銀時だった。しかし向かったのは食事の席ではなく、菊の元である。立って歩けない菊をまたもや抱き上げ、席まで運んでゆく。短い距離でも這い蹲るだけで疲れてしまった菊は抵抗も何もせず、銀時の行動に甘んずる。