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さよなら桃源郷(銀魂:銀時夢)

第3章 あたたかな


*****


 菊が目を覚ませば、見知らぬ天井が目に入る。ぼうっとした頭でそのまま天井を見つめていれば、部屋の外から賑やかな声が聞こえた。複数の人たちがいるようだ。そして聞こえる声の一つは揚羽の物であるのが分かった。そういえば万事屋に向かっていたのだと思い出し、布団から体を起き上げる。見回した部屋は吉原の自室とは違い、生活感が溢れていた。箪笥や机などの家具があり、無造作に置かれている服もちらほらと見える。部屋の片隅にも本の山があり、他人の住む気配が充満していた。

 明るく万事屋の人達と話している揚羽の元へ行こうと、菊は体育座りをして足に力を込める。しかし立ち上がろうとした瞬間、体に電撃が走ったような痛みを感じた。

「…っ!」

 声にならない悲鳴が出る。包帯で巻かれた足の火傷は酷く、軽い菊の体重でさえ支えられない状態だった。改めて火傷の事を思い出せば、掌の痛みも思い出す。表面のびりびりとした刺激と、その下から強く脈打つ己の血の流れが気持ち悪い。それでも諦めてたまるかとばかりに、菊は畳を這い蹲って襖へ向かった。

 襖へ辿り着き勢い良く開ける。その瞬間、部屋の外の人たちは会話を止め、菊に視線を向けた。

「姐さん!」

 一番に菊の元を駆けつけたのは揚羽だった。満面の笑みで菊にそっと抱きつく。菊もそんな揚羽に出来る範囲で痛む腕を少女にまわした。
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