第2章 そして貴方と出会った
「…ありがとうね。お兄さん。」
「あ? いきなり何なんだよ。」
「姐さんを吉原(ここ)から出してくれて。」
ガタゴトと上へ上がるエレベーターは揚羽に吉原を一望する機会を与えた。その光景をしかと捉えた双眸は銀時に向けられ、切実に感謝の念を伝える。
「何言ってんだ。俺ァ、こいつがお前を上に出せっつたから、代償として扱き使う予定なんだよ。別に礼いわれる筋合いはねぇだろ。」
「それでも、姐さんは吉原から離れた方が良いの。あそこに居たら結局、一番に苦しむのは姐さんだから。あそこに居て、一番危険なのは、姐さんだから。」
声は小さいが、菊を想う音色は強かった。銀時もこれ以上の返事をせず、ただ少女の言葉に耳を傾ける。
「もう姐さんには私の所為で、苦しくて、辛くて、危ない目には遭って欲しくない。私はもう十分に護られたから、だから、姐さんには幸せになって欲しいの。いつも私に教えてくれた『本当の女の幸せ』を、姐さん自身に手に入れて欲しいの。」
だからこれからも、姐さんの事よろしくね。銀兄さん。